● 尿酸アンモニウム結石
尿中に大量に排泄された尿酸とアンモニウムが結合して結晶を作ります。
高タンパク、特に内蔵類や獣肉類の多い食事を与えられていると発症しやすくなります。
ダルメシアンは遺伝的になりやすい犬種ですので、特に気を付けて下さい。
タンパク質を抑えた食事 エネルギー源として脂肪や穀類を利用
犬の尿酸アンモニウム尿石の食事管理 尿酸アンモニウム尿石は、その形成にプリンヌクレオチド代謝が関連することから、キサンチンやその他の尿酸塩とともにプリン尿石と呼ばれることがあります。先天的な原因により尿石形成にいたるケースも多く、長期間の予防管理が必要になることもあります。 ■■尿酸アンモニウム尿石の疫学■■ 尿酸アンモニウム尿石は、2009年5月から11月までにヒルズ尿石分析サービスに提出された尿石全体の4%を占めており、回収した時の犬の平均年齢は6.84±3.24歳(0.9歳~14.2歳)でした。また、雄90%対雌10%と雄の方が罹患しやすい傾向がみられました。尿酸アンモニウム尿石が回収された犬種は、ダルメシアン 38%、シーズー 25%、M.シュナウザー6%など13犬種であり、特にダルメシアンでは、ストルバイトやシュウ酸カルシウム主体の尿石は全く検出されず、プリン尿石およびプリン尿石が主体の複合結石のみが回収されています。 ■■尿酸アンモニウム尿石の発生機序と危険因子■■ ヒトにおいて、プリン代謝における最終代謝物は尿酸であるため、体内の尿酸濃度が上昇することで痛風が発症したり、尿酸塩による尿路結石が形成されることはそれほど珍しいことではありません。ところが、霊長類以外の犬猫を含む大多数の哺乳類では、尿酸をウリカーゼという酵素によりアラントインに進めることができます。アラントインは非常に溶解性の高い物質であるため、結石化することはありません。
したがって、一般的な健康犬ではプリン尿石が形成される可能性は低く、ダルメシアン(及びその他の数犬種)であること、もしくは門脈血管異常を持つ犬であることなどが重要な危険因子となります。ダルメシアンは、肝臓及び腎臓における独特のプリン代謝を持つことから、他の犬と比べ尿への尿酸排泄量は10倍程度にもなります。また門脈血管異常を持つ犬では血中および尿中の尿酸とアンモニア濃度が増加していることがあり、これが尿石の形成につながります。
また、ストルバイト尿石に僅かな(数%程度)尿酸塩が検出されることがありますが、これは尿路感染の影響による共沈殿と考えられ、通常は治療時に考慮する必要はありません。■■キサンチン尿石■■ キサンチンはキサンチンオキシダーゼにより尿酸に変換されるプリン代謝産物であり、非常に溶解性が低いため、尿中に排泄された場合、尿石形成を引き起こす可能性があります。
ヒトでは、キサンチンオキシダーゼを欠損する遺伝的なキサンチン尿症が認められています。犬ではキサンチン尿症の最も一般的な原因はアロプリノールの投与によるものですが、キャバリアキングチャールズスパニエルでは自然発生のキサンチン尿症及び尿石の発生が報告されています。2009年5月から11月までにヒルズ尿石分析サービスに寄せられたキサンチン尿石は2例あり、そのすべてがキャバリアキングチャールズスパニエルとなっています。■■プリン尿石の食事管理■■ 尿酸アンモニウムを含むプリン尿石の管理は、尿酸、アンモニウムイオン、水素イオンの尿中濃度を低下させることが目標になります。したがって、プリンレベルが低いアルカリ化食である、プリスクリプション・ダイエット〈犬用〉u/dはプリン尿石の管理に最適です。u/dの給餌により、尿中の尿酸およびアンモニアの排泄が著しく減少することが複数の研究により示されており、尿路感染が抑えられた尿酸アンモニウム尿石の症例ではアロプリノールを併用することで溶解することも可能です。また、正常なヒトにおいて、NaClを10日間与えても尿中尿酸濃度に変化がなかったという興味深い報告がなされています。 徳本一義